HR Techとは? 市場規模や企業の活用事例。医療業界(病院やクリニック)への導入について

人事・採用領域で数年前から「HR Tech(HRテック)」という言葉をよく耳にします。「●●テック」という名前からも想像できるように、HRとテクノロジーを掛け合わせた造語です。昨今のDXブーム然り、テクノロジーを上手にビジネスに組み込むことで、事業は大きく飛躍する余地があります。

記事では、そんなHR Techに関する市場規模や企業の活用事例を解説します。

HR Tech(HR テック)とは何を指すのか?

先ほども触れたように、最近は既存の言葉に「テック」をつけた造語が流行っています。しかし、ブームであることはビジネスにおいて重要ではありません。最終的に事業利益に繋がる本質性が重要です。

では、HR Techとはどんな意味なのでしょうか? HR Techとは、読んで字のごとく、HR(人事)領域にあらゆるテクノロジーおよびツールを導入し、人事領域のパフォーマンスを向上させる取り組みのことを指します。

いま話題の「DX(デジタルトランスフォーメーション)」に含まれる概念で、人事業務からなるべく人力による事務処理やデータ管理を省き、ツールのプログラムやAI(人工知能)の技術で生産性を上げることが目的にあります。

HR Techが関わる人事領域はどこ?

人事領域と言えど範囲は広いです。HR Techはどこに関係するのでしょうか...?

答えは”人事領域の全て”です。HRは「Human Resource(ヒューマンリソース)」の頭文字をとった言葉ですが、以下のような全領域にHR Techは関与すると考えてください。

  • 人材募集
  • 面接
  • 人材採用
  • 入社のオンボーディング
  • 人材育成
  • 人材評価
  • 適正検査・キャリア支援
  • 労務管理          など

HR Techの市場規模

※ 画像引用元:ミック研究所の資料より

HR Techの市場規模について、デロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社が調査資料を発表しました(21年2月1日)。資料によると、2020年度のHR Techの市場規模は前年比124.6%の426.0億円と報告されています。

将来的な予測としては、2021年度は前年比132.9%の566.0億円。翌年の2022年度はオリンピック後ということもあってか、伸び率がやや鈍化していますが、資料に書かれている2025年度まで毎年伸び続けることは確信をもって予想されているようです。

なお、このレポートはソフトウェア・サービスを提供するベンダー49社を対象に、「採用管理クラウド」「人事・配置クラウド」「労務管理クラウド」「育成・定着クラウド」の4分野からなるHR Techのクラウドソリューションの市場調査を行なっています。

※ 参考元:日本経済新聞「ミック経済研究所、「HRTechクラウド市場の実態と展望 2020年度版」を発刊」

HR Techが扱うサービスの分類

人材領域の全般に関わるHR Techですが、「採用管理システム」「人事評価システム」「勤怠管理システム」「労務管理システム」に大別することができます。

採用管理システムとは?

採用管理システムは「ATS(Applicant Tracking System)」とも呼ばれ、採用活動に関する情報処理や事務作業を効率化するシステムを指します。

採用管理では、求職者とのやりとりを通じて、さまざまな業務が発生しますよね。例えば、応募者とのメッセージやエントリーシートの確認・面接官のセッティングや面接日の調整・採用通知など。これらの業務は、一つひとつは大きなToDoではないものの、応募者の人数が増えてくると途端に煩雑になって対応が追いつかなくなりがちです。

採用管理システムは、そんな煩雑になりがちな応募情報を一元管理してくれて、採用担当者の負担を少なくしてくれます。一般的な採用管理システムに備わっている機能は以下の通りです。

  • 求人情報の自動登録
  • 採用サイトの作成機能
  • カレンダー連携で面接日程を管理
  • 複数媒体の応募者情報を一元管理
  • 面接官の評価を入力

人事評価システムとは?

人事評価システムは、社内の人事評価を行う際に発生するデータ管理や評価の判定を効率化するシステムのことです。企業にとって、新規社員の採用だけでなく、既存社員の評価とモチベーションを支援する仕組みは非常に重要です。

不適切な人事評価やいい加減な評価を続けていると、社員のロイヤルティ(会社への愛着)の低下を招き、従業員の定着度の低下に繋がってしまいます。とはいえ、一人ひとりの対応に時間がかかってしまうのも採用担当者の負担が大きくなってしまうので、人事評価システムの導入が効果的なのです。

一般的な人事評価システムには、以下の機能が備わっています。

  • 目標・進捗管理機能
  • 目標管理制度(MBO)
  • 多面的(360度)評価機能

勤怠管理システムとは?

勤怠管理システムとは、社員の勤怠に関するデータを収集し、打刻管理や労働時間の管理を効率化するシステムのことです。「働き方改革」が叫ばれて久しいですが、現在では多くの企業がITツールを使って勤怠管理を行なっています。

勤怠管理システムの導入により、社員の勤務状況を一発でデータ化できるようになったため、「誰がどれくらい今月は働いたのか」「どの部署・チームに労働の負担がかかっているのか」が把握でき、良好な職場づくりを後押ししてくれるようになりました。

一般的な勤怠管理システムには、以下の機能が備わっています。

  • 従業員の勤怠管理/打刻管理
  • 勤怠データの集計機能
  • 残業代や休日出勤の手当の把握
  • 勤務超過を未然に防ぐ機能    など

労務管理システムとは?

労務管理システムとは、労務に関するあらゆる機能やデータ保存を行ない、福利厚生や社会保険・労使関係の手続きを効率化するシステムです。労務は全般的にオペレーション業務(事務作業)が多く、テクノロジーの導入で効率化する余地のある分野です。

一方で、社内に一人しかいない労務担当者が、多くの社員の入退社にまつわる書類作成や雇用に関する契約書の作成、勤怠管理や給与計算をまるっと任され、疲弊している場面もよく見られます。労務管理システムを導入することで、労務担当者を増やす必要なく、業務を進めていけることでしょう。

一般的な労務管理システムには、以下の機能が備わっています。

  • 社会保険や雇用保険に関する書類作成
  • 扶養控除等申告書等の作成と提出
  • 従業員情報の管理(扶養家族情報やマイナンバー情報)
  • 年末調整書類の作成と提出
  • 給与支払報告書、源泉徴収票、所得税徴収高計算書等の作成と提出
  • 雇用契約書や秘密保持誓約書等の作成と提出

HR Techが成功している企業事例

「採用管理」「人事評価」「勤怠管理」「労務管理」などの機能を指すHR Techですが、具体的に導入に成功している企業にはどこがあるのでしょうか? 

ソフトバンク株式会社

採用の現場では「母集団形成」という言葉がよく使われますが、ハイエンド層を常に採用したいソフトバンクは”待ち”の姿勢である母集団形成は採用のスピード感を失うと考えました。そこで、エントリーシートの分析にAI技術を導入します。

まずAI技術に過去にハイパフォーマンスを出した従業員のエントリーシートを教師データとして学習させました。その後に採用活動で手にした求職者のエントリーシートをAIのフィルターに通すと、自動的にポテンシャルの評価が行われ、それまで人力で行なっていた評価業務の生産性が大幅に上がったといいます。

ソフトバンクのバランス感覚が優れているのが、AIの仕分けに全てを任せるのではなく、AIが合格と判断したエントリーシートをさらに人の目で二重に確認するフローを行なったことです。これにより、精度高く採用を活動を進めていけるようになりました。このようにテックと人のバランスのいい活用が、現在のHR Techの上手な用い方なのかもしれません。

※ 参考元:HRテクノロジー「AIによるエントリーシート選考が“攻めの採用”を加速させる500時間の工数を削減した“ソフトバンク流”未来の新卒採用(前編)」

株式会社日立製作所

日立製作所では、かつて「よく考え問題を深掘りしていくタイプの人材」は多かったのですが、「行動的で創造的な人材」は少ないという課題を抱えていました。

これまで社内に不足していた人材を採用するために、「人財バリューチェーン」の考えに基づき、「1. 採用」→「2. 配置・配属」→「3. 育成」→「4. 生産性向上」のサイクルを意識し、データを蓄積・次のフェーズに活かす仕組みを作りました。

その後、蓄積された人材データから人材を4タイプに分類。結果的に同社は1つのタイプの人材が全体の65%におよび偏っていることがわかりました。そこから、”なぜ人材のタイプが偏ってしまったのか”を社内にヒアリングなど調査を行い、採用フローを丁寧に見直し。現在では、タイプの偏りは軽減し、バランスのいい多様性のある組織に変革を遂げたといいます。

※ 参考元:HRテクノロジー「日立製作所の新卒採用における人財アナリティクス (前編)」

【2021年版】HR Techサービスのカオスマップ


最後にHR Techサービスのカオスマップをご紹介したいと思います。HR Techのサービスにはどのようなものがあるのでしょうか。HR Techの領域は広いですから、記事では「採用」「タレントマネジメント」「人材育成」「労務・給与」の4分類に分けてご紹介したいと思います。

以下箇条書きのリスト作成時に参考にさせていただいたのは、株式会社ジェイックが運営する『HRドクター』からダウンロードできる資料です。元資料に興味がある方は、以下よりダウンロードされてみてください。

※ 参考元:HRドクター「HRtechカオスマップ【2021最新版】」

【採用(マッチング)】

  • Future Finder
  • OfferBox
  • キャリトレ
  • グーカ
  • posty!
  • mitsucari
  • コグナビ
  • GROW360
  • MiRAVEL
  • LAPRAS SCOUT
  • ジョブスプリング オンライン

【採用(選考管理・見極め)】

  • ジョブカン
  • ハーモス
  • EHR
  • MOCHICA
  • i-web AI
  • talent IQ
  • jinjer
  • 採用一括 かんりくん
  • job Suite
  • Hirehub
  • リクナビ HR Tech
  • ジョブオプ

【採用(採用マーケティング)】

  • Jobギア 採促
  • エンゲージ
  • 採用BOOSTER

【タレントマネジメント(人材管理)】

  • jinjer 人事
  • カオナビ
  • スキルナビ
  • Sharin
  • saireco
  • COCOREPO
  • HR Brain
  • ヒトマワリ
  • CROSS STAFF
  • タレントパレット
  • POSITIVE
  • SMART LINK

【タレントマネジメント(人事評価)】

  • HAMOS
  • あしたのクラウド
  • MINAGINE
  • ススムくん
  • ZOHO People
  • SEA GREEN
  • MBO Cloud
  • スキルナビ
  • 人事評価システム 明快
  • P-TH
  • 人事評価 Navigator

【タレントマネジメント(エンゲージメント)】

  • MOTIVATION CLOUD
  • wevox
  • Geppo
  • Goodモチベーション
  • engauge.works
  • MotifyHR
  • TUNAG
  • Goodjob!
  • thankit
  • ENGAGEMENT CLOUD
  • RECOG
  • attuned
  • はたLuck

【タレントマネジメント(人事可視化・分析ツール)】

  • MiTERAS
  • CARIBO
  • IntelliReport
  • Thomas
  • GROW360
  • +ab|ea
  • Talent View
  • HR OnBoar
  • スマレビ for 360°

【タレントマネジメント(社内コミュニケーション)】

  • Chatwork
  • LINE WORKS
  • slack
  • Talknote
  • Trello
  • Stock
  • WowTalk
  • repsona
  • TALK InCircle
  • CYBERCHAT
  • CISCO
  • solanowa
  • TeamHack

【人材育成(e-learning)】

  • SAKU-SAKU Testing
  • ジッセン! オンライン
  • GLOBIS 学び放題(法人向けサービス)
  • Schoo for Business
  • 研修素材.com
  • ドットインストール
  • playse
  • 派遣のミカタ
  • UMU
  • グロービス学び放題 フレッシャーズ
  • Reflectle
  • cornerstone
  • shouin
  • en-college ONLINE

【人材育成(LMS)】

  • ek-Bridge
  • Learning Ware
  • Knowledge Deliver

【労務・給与(勤怠)】

  • バイバイタイムカード
  • ジョブカン 勤怠管理
  • KING OF TIME
  • CT NAVI
  • Team Spirit
  • AKASHI
  • CAST
  • CLOUZA
  • 就業 Oasis
  • IEYASU 勤怠管理
  • kincone
  • RecoRu
  • Rococo HR
  • Sync Up

【労務・給与(労務)】

  • jinjer
  • freee
  • ジョブカン
  • SmartHR
  • Bizer
  • e-AMANO
  • ARDIO
  • Company Edition
  • オフィスステーション 労務
  • Gozal
  • EHR
  • 楽楽労務
  • SMART LINK
  • Direct HR
  • 奉行 労務管理電子クラウド

【労務・給与(マイナンバー)】

  • jinjer マイナンバー
  • Money Forward クラウドマイナンバー
  • nyoibox
  • freee
  • 達人
  • FreeWayJapan
  • Workcloud
  • マイナクラウド
  • MyNUMBER
  • Socia マイナンバーシステム

【労務・給与(経理)】

  • jinjer 経理
  • ECOAS
  • 経費Bank Ⅱ
  • rakumo
  • BUSINESS NAVITIME
  • ジョブカン 経費精算
  • Money Forward クラウド会計
  • Traveler’s WAN
  • Systemaflow
  • 駅すぱあと WORLD
  • ExchangeUSE
  • kincone
  • INVOICE POST
  • VALTEC ハイ!経費

【労務・給与(給与)】

  • freee
  • フリーウェイ 給与計算
  • Money Forward クラウド給与
  • PayBook
  • 給与奉行11
  • Socia 給与システム
  • やよいの給与明細 オンライン
  • ZeeM
  • ジョブカン 給与計算
  • かんたんクラウド給与
  • フォーカス給与明細クラウド
  • JDL IBEX
  • CYBER XEED 給与

人手不足に陥りがちな医療業界にもHR Techを

弊社サービス『人採(ヒトサイ)』は、病院やクリニックなどの医療施設向けの採用サイト作成サービスです。我々が日々お客様に関わらせていただくなかで感じるのが、医療業界へのHR Tech導入の遅れです。

その一方で、「看護師の採用が慢性的に間に合っていない」「視能訓練士が急に辞めて現場が困っている」など、採用難を示す声もよく耳にします。

記事でご紹介したHR Techはあらゆる業界に通ずることですが、医療業界こそ強く意識して採用のあり方を変えてみるべきではないでしょうか。ぜひ、記事を参考に自社の人事領域のHR Techシフトをご検討されてみてください。その過程で、『採用サイトを作りたい』というニーズがありましたら、お気軽に『人採(ヒトサイ)』までお問い合わせください!

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